コンピュータソフトウェア関連発明について



コンピュータソフトウエア関連発明(以下、「CS関連発明」という。)とは、その発明の実施においてソフトウエアを利用する発明をいいます。

現代社会では、ありとあらゆるものにコンピュータソフトウェアが使用されており、その発明分野は広範囲に及び、今後も益々ソフトウェア化が進むものと考えられます。

CS関連発明の技術分野としては、例えば、以下の分野が該当します。

■ 機器の制御(家電機器、エンジン、工場プラントなど)
■ データ処理(画像処理、暗号化、DNA解析など)
■ 通信 (通信ソフト、モバイルデバイス、クラウドシステムなど)
■ ゲームソフト
■IoT
■人工知能
■ ビジネス方法

ここでは、CS関連発明に関して、一般の特許出願に比べて、留意すべき事項について、特許庁の「 特許 ・実用新案審査ハンドブック」(外部リンク)に基づいて、見て行きたいと思います。

CS関連発明のカテゴリー


CS関連発明についても、「方法の発明」又は「物の発明」のカテゴリーとし て、請求項に記載して出願することができます。

方法の発明


CS関連発明を、時系列につながった「手順」として表現できるときは、その「手順」を特定すること により、「方法の発明」(「物を生産する方法の発明」を含む。)として請求項に記載して出願することができます。

物の発明


CS関連発明を、その発明が果たす複数の機能によって 表現できるときに、それらの機能により特定された「物の発明」として請求項 に記載して出願することができます。

なお、CS関連発明は「物の発明」のカテゴリーとして次のものも認められています。

(1)プログラム
「プログラム」を、「物の 発明」として請求項に次のように記載することができます。

〇例 1:コンピュータに手順 A、手順 B、手順 C、…を実行させるためのプログラム
〇例 2:コンピュータを手段 A、手段 B、手段 C、…として機能させるためのプログラム
〇例 3:コンピュータに機能 A、機能 B、機能 C、…を実現させるためのプログラム

(2) 「構造を有するデータ」又は「データ構造」
データの有する構造によりコンピュータが行う情報処理が規定される 「構造を有するデータ」又は「データ構造」を、「物の発明」として請求項 に次のように記載することができます。

〇 例 4:データ要素 A、データ要素 B、データ要素 C、…を含む構造を有するデータ
〇例 5:データ要素 A、データ要素 B、データ要素 C、…を含むデータ構造

(3) 記録媒体
「プログラム」又は「構造を有するデータ」を記録 したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を、「物の発明」として次のように請求項に 記載することができます。

〇例 6:コンピュータに手順 A、手順 B、手順 C、…を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
〇例 7:コンピュータを手段 A、手段 B、手段 C、…として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
〇例 8:コンピュータに機能 A、機能 B、機能 C、…を実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
〇例 9:データ要素 A、データ要素 B、データ要素 C、…を含む構造を有するデータを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

留意事項


なお、末尾が上記の「プログラム」、 「構造を有するデータ」又は「データ構造」 、「 記録媒体」でなくても、以下のように扱われる場合があります。

(1) 請求項の末尾が「プログラム」以外の用語(例えば、「モジュール」、「ラ イブラリ」、「ニューラルネットワーク」、「サポートベクターマシン」、 「モデル」)であっても、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮 すると、請求項に係る発明が「プログラム」であることが明確な場合は、「プ ログラム」として扱われます。

(2) 請求項の末尾が「プログラム製品」又は「プログラムプロダクト」であっ ても、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮すると、以下の(a) から(c)のいずれかを意味することが明確な場合は、その意味するとおりのものとして扱われます。

(a) 「プログラム」自体
(b) 「プログラムが記録された記録媒体」
(c) 「プログラムが読み込まれたコンピュータシステム」などのプログラムが読み込まれたシステム

(3) 請求項の末尾が「方式」又は「システム」の場合は、「物」のカテゴリー を意味する用語として扱われます。


発明該当性(第29条第1項柱書)


請求項に係る発明が、CS関連発明である場合も、特許法上の発明と認められるためには、当該発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」である必要があります。

当然「自然法則を利用した技術的思想の創作」 と認められるもの


CS関連発明であっても、次のように全体として自然法則を利用しており、「自然法則を利用した技術的思想の創作」と認められ るものは、ソフトウエアという観点から検討されるまでもなく、当然「発明」に該当すると認められます。

(1) 機器等(例:炊飯器、洗濯機、エンジン、ハードディスク装置、化学反応装置、核酸増幅装置)に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの

(2) 対象の物理的性質、化学的性質、生物学的性質、電気的性質等の技術的性質(例:エンジン回転数、圧延温度、生体の遺伝子配列と形質発現との関 係、物質同士の物理的又は化学的な結合関係)に基づく情報処理を具体的に 行うもの

「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しないもの


以下に示すものは、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当しないため、特許法上の発明に該当せず、特許を受けることができません。

(1) 自然法則を利用していないもの
(i) 自然法則以外の法則(例:経済法則)
(ii) 人為的な取決め(例:ゲームのルールそれ自体)
(iii) 数学上の公式
(iv) 人間の精神活動
(v) 上記(i)から(iv)までのみを利用しているもの(例:ビジネスを行う方法それ自体)

(2) 技術的思想でないもの
提示される情報の内容にのみ特徴を有するものであって、 情報の提示を主たる目的とするもの

ソフトウエアの観点に基づき自然法則を利用していると認められる場合


上記の当然「自然法則を利用した技術的思想の創作」 と認められるもの以外であっても、ソフトウエアの観点に基づき自然法則を利用していると認められる場合があります。

ソフトウエア による情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合は、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」と認められます。

ここてで、「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現 されている」とは、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することによ って、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されることをいいます。

従って、CS関連発明が特許法上の発明該当するかどうかの判断は、 請求項に係る発明が、ソフトウエ アとハードウエア資源とが協働した具体的手段又は具体的手順によって、使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工が実現されているものであるか否かにより判断 されることになります。


進歩性の判断


CS関連発明における進歩性の判断についても、通常の「審査基準」に従って行われますが、特に以下の点は進歩性が否定される方向に働きます。

(1) ある特定分野に適用されるコンピュータ技術の手順、手段等を他の特定分野に単に適用するのみであり、他に技術的特徴がなく、この適用によっ て奏される有利な効果が出願時の技術水準から予測される範囲を超えた顕著な ものでもないことは、進歩性が否定される方向に働く要素となります。

(2) ソフトウエア化、コンピュータ化に伴う課題は、コンピュータ技術の分野 に共通な一般的課題であることが多い 。

(3) コンピュータによってシステム化することにより得られる、「速く処理できる」、「大量のデータを処理できる」、「誤りを少なくできる」、「均一な結果が得られる」などの一般的な効果は、システム化に伴う当然の効果であることが多い。

当業者の通常の創作能力の発揮に当たる例


以下にのようなものは、ソフトウエア関連発明の分野における当業者の通常の創作能力の発揮に当たります。そのため、以下の例に該当することは、進歩性が否定される方向に働くきます。

(1) 他の特定分野への適用
ある特定分野に関するソフトウエア関連発明 の手順又は手段を他の特定分野に適用しようとすることは、当業者の通常の創 作能力の発揮に当たります。

(2) 周知慣用手段の付加又は公知の均等手段による置換
システムの構成要素として通常用いられるもの(周知慣用手段)を付加することや、システムの構成要素の一部を公知の均等手段に置換しようとすることは、 当業者の通常の創作能力の発揮に当たります。

(3) ハードウエアで行っている機能のソフトウエアによる実現
回路などのハードウエアで行っている機能をソフトウエアで実現しようとす ることは、当業者の通常の創作能力の発揮に当たります。

(4) 人間が行っている業務やビジネスを行う方法のシステム化
特定分野において人間が行っている業務やビジ ネスを行う方法をシステム化し、コンピュータにより実現することは、通常のシステム分析手法及びシステム設計手法を用いた日常的作業で可能な程度のことであれば、当業者の通常の創作能力の発揮に当たります。

(5) 公知の事象をコンピュータ仮想空間上で再現すること
公知の事象を、コンピュータ仮想空間上で再現することは、通常のシステム 分析手法及びシステム設計手法を用いた日常的作業で可能な程度のことであれ ば、当業者の通常の創作能力の発揮に当たります。

(6) 公知の事実又は慣習に基づく設計上の変更
公知の事実又は慣習に基づく設計上の変更が以下の(i)かつ(ii)に該当するときは、 当業者が必要に応じて定める設計上の変更にすぎず、当業者の通常の創作能力 の発揮に当たります。

(i) 当業者がその技術分野における周知慣用技術や技術常識、一般常識(顕著 な事実を含む。)等を考慮した上で、その設計上の変更を行うかどうか を適宜決めるべきものであるとき。
(ii) その設計上の変更を行うことに技術的な阻害要因がないとき。

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