実用新案技術評価とは



実用新案制度では、 特許と違って、実体審査を経ることなく早期に実用新案権の設定登録がされます。

従って、実用新案権が設定登録されてもその権利が有効なものであるかどうかは、当事者が判断して、問題を解決して行く必要があります。

しかし、その判断は技術性及び専門性が要求さ れるため、当事者間の判断が困難で、不測の混乱を招く可能性もあります。

このため、当事者間で判断のつきにくい新規性進歩性等の有無の判断のための客観的な判断材料を特許庁に求めることができるように、実用新案技術評価制度が設けられています。

ここでは、審査基準(外部リンク)に基づいて実用新案技術評価制度について見て行きたいと思います。


実用新案技術評価


実用新案技術評価として、審査官は、請求項に係る考案が以下の実体的要件を満たすか否かについてのみ評価します。

文献公知考案に基づく新規性(第 3 条第 1 項第 3 号)
文献公知考案に基づく進歩性(第 3 条第 2 項(第 3 条第 1 項第 3 号に掲げる 考案に係るものに限られる。))
拡大先願(第3 条の2)
先願(第7 条第1 項から第3 項まで及び第6 項)


実用新案技術評価の進め方


評価対象の決定


審査官は、実用新案技術評価の請求がなされた請求項に係る案を評価対象とします。

請求項に係る考案の認定


審査官は、請求項に係る考案の認定を、請求項の記載に基づいて行います。請求 項に係る考案の認定は、特許の審査における 新規性進歩性等 の審査の進め方に準じて行います。

先行技術調査の対象の決定


審査官は、考案の単一性の要件が満たされているか否かにかかわらず、評価対象とした請求項に係る考案については、請求項に係る考案の実施の態様も考慮して、 全てを先行技術調査の対象します。

先行技術調査


審査官は、原則として、特許出願の審査における先行技術調査と同様の手法で先行技術調査をします。

新規性、進歩性等の評価


審査官は、評価対象について、新規性進歩性等の評価をします。

先行技術調査及び新規性、進歩性等の評価をすることが困難である場合の取扱い


(1) 審査官は、評価対象とした請求項について、可能な範囲において、先行技術 調査をします。

(2) 請求項に係る考案が明確でない、その考案の属する技術の分野における通常 の知識を有する者がその実施をすることができる程度に考案の詳細な説明が記載されていない等の場合でも、審査官は、明細書、実用新案登録請求の範囲及び図面の記載並びに出願時の技術常識から みて、評価対象についての合理的な前提条件を仮定的に設定できるときは、 最も合理的な前提条件を置いた 上で新規性、進歩性等の評価をします。

(3) 明細書又は図面を参酌しても考案を把握することができないほどに請求項の記載が明確でない、又は考案に該当しないものが請求項に記載されている等の場合には、審査官は、評価書に有効な先行技術調査をすることができなかったと認める旨をその理由とともに記載します。


評価書の作成


審査官は、評価書に、調査範囲、評価、引用 文献等の表示及び評価についての説明を記載します。

評価の記載


審査官は、新規性、進歩性等の評価を請求項ごとに記載します。

また、そのように評価した理由を請求人が理解できるように、評価につ いての説明を以下のように記載します。

(1) 新規性、進歩性等が否定される場合は、審査官は、評価についての説明の欄 に、そのような評価をした理由を請求人が理解できるように記載します。

(2) 審査官は、考案が明確でないこと等により、新規性、進歩性等の評価を十分 にすることができないと認めるときは、その旨、明細書等にどのような記載不備があるのか及びどのような前提で新規性、進歩性等の評価をしたのかを記載します。

(3) 審査官は、有効な調査を行うことができなかったときは、 その旨及びその理由を併せて記載します。

(4) 審査官は、分割、変更要件を満たしていないと判断した場合又は優先権の主 張の効果が認められないと判断した場合は、その理由と、現実の出願日を基 準日として評価をした旨を記載します。

(5) 新規性、進歩性等の評価に関係しない事項については、明らかなものであっても評価書に記載しません。


参考資料


実用新案法


(実用新案技術評価の請求)
第十二条 実用新案登録出願又は実用新案登録については、何人も、特許庁長官に、その実用新案登録出願に係る考案又は登録実用新案に関する技術的な評価であつて、第三条第一項第三号及び第二項(同号に掲げる考案に係るものに限る。)、第三条の二並びに第七条第一項から第三項まで及び第六項の規定に係るもの(以下「実用新案技術評価」という。)を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係る実用新案登録出願又は実用新案登録については、請求項ごとに請求することができる。

2 前項の規定による請求は、実用新案権の消滅後においても、することができる。ただし、実用新案登録無効審判により無効にされた後は、この限りでない。

3 前二項の規定にかかわらず、第一項の規定による請求は、その実用新案登録に基づいて特許法第四十六条の二第一項の規定による特許出願がされた後は、することができない。

4 特許庁長官は、第一項の規定による請求があつたときは、審査官にその請求に係る実用新案技術評価の報告書(以下「実用新案技術評価書」という。)を作成させなければならない。

5 特許法第四十七条第二項の規定は、実用新案技術評価書の作成に準用する。

6 第一項の規定による請求は、取り下げることができない。

7 実用新案登録出願人又は実用新案権者でない者から第一項の規定による請求があつた後に、その請求に係る実用新案登録(実用新案登録出願について同項の規定による請求があつた場合におけるその実用新案登録出願に係る実用新案登録を含む。)に基づいて特許法第四十六条の二第一項の規定による特許出願がされたときは、その請求は、されなかつたものとみなす。この場合において、特許庁長官は、その旨を請求人に通知しなければならない。

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