国内優先権制度とは


国内優先権制度とは、既に出願した自己の特許出願又は実用新案登録出願(先の出願)の発明を含めて包括的な発明としてまとめた内容を、優先権を主張して特許出願(後の出願)をする場合に、 先の出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(当初明細書等)に記載されている発明について、新規性、進歩性等の判断の基準時を先の出願の時とするという有利な取扱いを認めるもの です。

これにより、基本的な発明の出願の後に、その発明と後の改良発明とを包括的な発明としてまとめた内容で特許出願をすることができ、技術開発の成果が漏れのない形で円滑に特許権として保護されることが容易になります。

ここでは、審査基準に基づいて国内優先制度について見て行きたいと思います。


国内優先権の主張の要件及び効果


国内優先権を主張することができる者


国内優先権を主張することができる者は、特許を受けようとする者であって、 先の出願の出願人である必要があります。

国内優先権の主張を伴う後の出願ができる期間


国内優先権の主張を伴う後の出願ができる期間(優先期間)は、原則として、先の出願の日から 1 年です。

国内優先権の主張の基礎とすることができる先の出願


次のものを除き、先の出願は、国内優先権の主張の基礎とすることができます。

①先の出願が出願の分割に係る新たな出願、出願の変更に係る出願又は実用新案登録に基づく特許出願である場合 ②先の出願が国内優先権の主張を伴う後の出②願の際に放棄され、取り下げら れ、又は却下されている場合
③ 先の出願について、国内優先権の主張を伴う後の出願の際に、査定又は 審決が確定している場合
④先の出願について、国内優先権の主張を伴う後の出願の際に、実用新案権 の設定の登録がされている場合

国内優先権の主張の効果


先の出願の当初明細書等に記載されている発明については、以下の実体審査において、後の出願が先の出願の時にされたものとみなされます。

(i) 新規性(第 29 条第 1 項)、
(ii) 進歩性(第 29 条第 2 項) (iii) 拡大先願(第 29 条の 2 本文)
(iv) 発明の新規性喪失の例外(第 30 条第 1 項及び第 2 項)
(v) 先願(第 39 条第 1 項から第 4 項まで)
(vi) 上記(i)から(v)までについての独立特許要件(第 17 条の 2 第 6 項において 準用する第 126 条第 7 項)

国内優先権の主張の効果についての判断


国内優先権の主張の効果についての判断が必要な場合


国内優先権の主張の効果が認められるか否かの判断を必要とするのは、 先の出願の出願日と後の出願の出願日との間に拒絶理由で引用する可能性のある先行技術等が発見された場合に限られますので、 審査官は、先の出願の出願日と後の出願の出願日との間に拒絶理由の根拠となり得る先行技術等を発見した場合のみ、優先権の主張の効果の判断を行います。

判断の対象


審査官は、国内優先権による優先権の主張の効果について、原則として請求項 ごとに判断をします。

先の出願の当初明細書等に記載した事項との対比及び判断


後の出願の明細書、特許請求の範囲及び図面が先の出願について補 正されたものである場合、その補正がされたことにより、 後の出願の請求項に係る発明が、新規事項の追加されたものとなる場合には、優先権の主張の効果が認められません


部分優先又は複合優先


部分優先又は複合優先についての取扱いは、「パリ条約による優先権」の規定 に準じます。

国内優先権の主張の基礎とされる先の出願が優先権の主張を伴う場合の 取扱い


累積的に優先権の主張されている場合の取扱いは、 「パ リ条約による優先権」の規定に準じます。

国内優先権の主張の効果についての判断に係る審査


国内優先権の主張の効果が認められないために、拒絶の理由が生じた場合には、審査官は、請求項を特定し、国内優先権の主張の効果が認められない旨及びその理由を記載した拒絶理由を出願人に通知します。

拒絶理由通知に対して、出願人から意見書が提出され、又は明細書、特許請求の範囲若し くは図面の補正がされた場合は、審査官は、改めて国内優先権の主張の効果の有無について判断します。

留意事項


国内優先権の主張を伴う出願の分割又は変更


国内優先権の主張を伴う後の出願の分割出願又は国内優先権の主張を伴う実用新案登録出願から特許出願への変更出願については、原出願において主張した国内優先権が主張されたものとみなされます。

国内優先権の主張の基礎とされた出願の取下げ


(1) 国内優先権の主張の基礎とされた先の出願は、次の場合を除き、その出願の日から 1 年 4 月を 経過した時に取り下げられたものとみなされます。

① 先の出願が放棄され、取り下げられ、又は却下されている場合
② 先の出願について査定又は審決が確定している場合
③ 先の出願について実用新案登録の設定の登録がなされている場合
④ 先の出願に基づく全ての国内優先権の主張が取り下げられている場合

(2) 国内優先権の主張を伴う後の出願の出願人は、先の出願の日から 1 年 4 月経 過後は、その主張を取り下げることができません。

(3) 日本を指定国に含む国際出願を国内優先権の主張の基礎とした場合は、その 国内優先権の主張の基礎とされた出願は、「国内処理基準時又は国際出願日から 1 年 4 月経過した時の いずれか遅い時に取り下げられたものとみなされます。

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