中国への商標出願-直接出願と国際出願の違い


日本から中国に商標出願をするには、直接出願とマドリッド協定議定書(以下、「マドプロ」という。)による国際出願制度(マドリッド制度があります。

通常、3か国以上に商標出願をすると、国際出願の方が費用的に優位であると考えられています。

そして、一般的に、次のようなメリットがあるとされています。

一の手続きで各締約国への出願が可能
手続きの一本化による経費節減
各国ごとの言語によらず一の言語で手続可能
国際登録簿により複数の国における権利を一元管理可能
■ 事後指定による登録後の権利の拡張

しかし、中国へのマドプロによる国際出願については、次の問題点を十分考慮しておく、必要があります。

直接出願の審査と国際出願の審査に違いがある。
各国個別の「登録証」が発行されない。
直接出願より審査に要する期間が長い。
セントラルアタックのリスクがある。

従って、単なる広い範囲で商標権を確保するだけでなく、実際に中国で商売をし、権利行使も考えるのであれば、直接出願をしておくことが望まれます。



直接出願の審査と国際出願の審査に違いがある。


中国では、中国への直接出願と中国を指定したマドプロによる国際出願の審査では,審査部門が異なり,運用している審査基準に差異があります。

中国への直接出願では、商標で使用する商品/役務(サービス)の指定について、日本で認められているような包括指定は認められておらず、個別の商品/役務(サービス)を指定する必要がありますが、国際出願の審査では、このような包括指定も一部認められる場合があります。

また、「商品/役務リストにない商品/役務」を指定する必要がある場合、いわゆる日本でいう「商品/役務(サービス)の積極記載」についても、直接出願では殆ど拒絶されますが、国際出願では認められているケースが多いです。

このことは、国際出願の場合、国際協調の立場から、直接出願に比べ審査が「あまい」と言えます。これは、出願者にとって有利なことでしょうか?審査が「あまい」ということは、中国で権利行使ができない商標が登録されてしまい、実際の権利行使段階で、その登録された商標が出願者が想定していた権利範囲が認められず、有効に権利行使できない可能性があるということです。


各国個別の「登録証」が発行されない。


国際登録の場合,登録された国際登録商標は国際事務局(WIPO)で一括管理されるため,各国の個別の「登録証」は発行されません。国際登録によって権利侵害問題等に対応しようとする場合,新たに中国での「商標登録証明書」を申請する必要が生じます。

商標登録証明書」に記載される指定商品/役務(サービス)は主に英語であり,実際に中国人に認識されている商品/役務(サービス)とのずれが生じ、適切な権利を主張できない可能性があります。

また、実際の行政摘発等は行政官が扱いますので、行政官が英語の商品/役務(サービス)の記載を中国語の商品/役務(サービス)と誤って解釈する可能性もあります。しがって、国際登録に基づく「商標登録証明証」では権利主張を有効に行えない可能性があるのです。


直接出願より審査に要する期間が長い。


審査期間は、国際出願の場合の審査期間は18ヶ月を要します。直接出願の場合は審査官による審査が9ヶ月で、異議申立期間(3ヶ月)を含めると12ヶ月程度になります。


セントラルアタックのリスクがある。


セントラルアタックとは、国際登録が、国際登録日から5年間は、国際登録の基礎となった出願・登録(基礎商標)(日本の商標出願又は商標登録)に従属(影響を受ける)することをいいま す。
すなわち、 国際登録日から5年の期間が満了する前にその基礎とる日本の商標出願又は商標登録が拒絶、放棄、無効等によりその出願・登録の効果が終了すると、その範囲内で 国際登録された指定商品や役務の全部又は一部について国際登録が取り消されてしまいます。その 結果として指定国における国際登録の効果も取消しに係る範囲内で失効します。

これは、なにも中国に限ったことではありませんが、日本の商標の登録が取り消されると、中国の商標も取り消されてしまうことになるので、注意する必要があります。

ただし、このような場合でも一定の手続きをすれば、救済される可能性はあります。

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