PCT国際出願の処理の流れ



PCT国際出願とは


発明は、先願主義のもと、一日でも早く 出願することが重要です。
しかし、特許を取得したい国が多くなると、そのすべての国に対して個々に それ ぞれ異なる言語を用いて異なる出願書類を提出することは、非常に困難で す。

PCT国際出願制度は、このような煩雑さ、非効率さを改善するために、国際的 に統一された出願書類を日本の特許庁に対して1通だけ 提出すれば、すべてのPCT加盟国に対して「国内出願」を出願した のと同様の効果が得られるようにしたものです。


PCT国際出願のメリットと戦略的利用


一つの出願で すべての加盟国でも 出願日を確保できる


特許出願は先願主義が採用されていため、一日でも早く出願をして、特許庁に出願日を認定してもらうことが最も重要です。

PCT国際出願では国際的に統一された出願書類をPCT加盟国である自国の特許庁に対して1通だけ提出すれば、すべてのPCT加盟国に対して国内出願をし たことと同じ扱いを受けることができます。つまり、そのPCT国際出願に与え られた国際出願日は、すべてのPCT加盟国における国内出願の出願日となるという大きなメリットが得られます。

優先日から 30ヶ月の猶予期間 が確保できる


パリ条約による優先権の主張は優先日から12か月しか認められませんが、PCT国際出願では、 権利を取得したい国に手続を進める(国内移行する)か否かは優先日から 30ヶ月以内に判断すればよいので、市場動向の変化や技術 の見極めなどによって、それぞれの国に対する国内移行の要否をじっくり検討 することができます。もちろん、30ヶ月を待たずに早期に国内移行することも可能です。

特許性判断のための 調査結果が早期に得られる


すべてのPCT国際出願は、その発明に関する先行技術があるか否かを調査す る「国際調査」の対象となります。先行技術調査が困難な分野でも、国際公開、各国への国内移行の前に国際調査の結果を取得することができ、自分の発 明の評価をするための有効な材料として利用することができます。

国際調査の 結果は、「国際調査報告」として出願人に提供されます。 また、国際調査報告と同時に、その発明の特許性について審査官 から「国際調査機関による見解書」が示されます。

また、2009年1月 より開始された補充国際調査11制度では、出願人の希望により、国際調査に加え、別の国際調査機関による補充調査を受 けることができます。

さらに、出願人の希望により、特許性を判断する際の国際的 な一定基準を発明が満たしているか否かの予備的な審査「国際予備審査」を受けることもできます。

出願などの手続 の簡素化・効率化が図れる


PCT国際出願に関するほとんどの手続は、自国の言語で自国の特許庁に対し て提出でき、その効果はすべてのPCT加盟国に及びます。そのため、 出願人は、願書、明細書、請求の範囲、 図面などを受理官庁宛てに一通提出するだけで済み各国言語で各国へ手続を行う直接出願に比べて手続が容易で効率的です。


PCT国際出願の処理の流れ


PCT国際出願の処理の流れ



(1)基礎出願


通常の国際特許出願の流れとしては、まず国内出願をし、これを基礎として、パリ条約に基づく優先権を主張して、出願から12か月以内に、国際出願をします。

(2)国際出願


締約国の国民及び居住者が出願人として国際出願を提出できる官庁を受理官庁といい、少な くとも出願人のうち一人が日本国民または居住者であれば、日本国特許庁に出願することがで きます。また、出願人の選択により、受理官庁としての国際事務局に出願することもできます。

日本国特許庁が受理した国際出願の管轄国際調査機関は、日本語出願については日本国 特許庁、英語出願については日本国特許庁、欧州特許庁又はシンガポール知的所有権庁の いずれかを選択することができます。

受理官庁は、PCT国際出願が条約・規則に従って作成されている場合、国際出願日を認定します。国際出願日として認定された国際出願は、各指定国におけ る正規の国内出願としての効果を有し、国際出願日は、各指定国における実際の出願日とみな されます。

また、国際出願日が認定されたPCT国際出願は、その出願日の時点で有効なすべてのPCT加盟国を「指定した」ものとみなされます(みなし全指定


(3)国際調査報告書


国際調査の目的は、PCT国際出願の請求の範囲に記載された発明に関連 のある先行技術を発見することです

国際調査報告」に は、関連があると認められた先行技術又は関連技術が記載された文献のリスト、 発明の分類(国際特許分類)、調査を行った技術分野、発明の単一性の欠如に 関する情報などが記載されます。

また、国際調査機関は、PCT国際出願の請求の範囲に記載された発明 が特許性(新規性、進歩性、産業上の利用可能性)を有するものと認められる かどうかの予備的かつ 非拘束的な審査官の見 解を示した「国際調査機関による見解書」を作成し、出願人に送付します。これは、国内移行をするか否かの判断のための参考情報として意義を有します。


(4)条約第19 条に基づく補正


出願人は、国際調査報告を受領した後、国際調査報告の送付の日から2月又は優先日から16月のいずれか遅く満了する期間内に、条約第19条に基づき、 請求の範囲を1回に限り補正することができます 。

19条補正は、WIPO国際事務局に対して提出します。

(5)国際公開


PCT国際出願は、優先日から18ヶ月を経過した後、速やかにWIPO国際事務局によって国際公開されます。

国際公開の内容は、書誌ページ(国際出願日、国際出願番号、出願人、指定国、要約などが記載された「フロントページ」)や明細書、請求の範囲、及 び図面の全文に加えて、国際調査報告、国際調査機関による見解書や、条約第 19条補正があった場合には補正後の請求の範囲なども合わせて掲載されます。

(6)国際予備審査の請求


国際予備審査は、PCT国際出願された発明の特許性に関する見解を、国際調査機関による見解書に加えて入手したいとき、あるいは、PCT国際出願の内容を補正したい場合などに、出願人が任意で請求する手続です。

国際予備審査を請求する場合、出願人は、国際調査報告と国際調査機関による見解書が出願人に送付された日から3ヶ月又は優先日から22ヶ月のうち、 どちらか遅く満了する日までに国際予備審査の請求書を提出し、手数料の支払 (請求書受理日から1ヶ月又は優先日から22ヶ月のうち、どちらか遅く満了する日まで)をする必要があります。


(7)条約34条の補正


国際予備審査を請求した出願人は、書面による見解又は国際予備審査報告の作成の開始前であれば、条約第34条に基づきPCT国際出願を補正することができます。また、国際調査機関による見解書に対する答弁書を、必 要により、34条補正とともに提出することができます。

(8) 国際予備審査報告書


国際予備審査は、国際予備審査機関が行い、所定の期間内に国際予備報告を作成し、附 属書類(条約第19条、第34条による補正書の書簡と差し替え用紙及び国際予備審査機関により許可された明らかな誤りの訂正の書簡と差し替え用紙)とともに出願人及び国際事務局に送付されます 。

国際予備報告は、選択国が要求した場合、国際事務局の責任において英語に翻訳され、 附属書とともに各選択官庁に送達されます。また、出願人に国際予備報告の翻訳文の写しが送付され、出願人はその翻訳文の誤りについて意見書を各関係選択官庁及び国際事務局 に送付することができます。

(9)国内段階への移行


PCT国際出願が、権利を取得したい国において実体審査を受けるためには、それらの国々へ国内移行手続を行う必要があります。さらに、権利を取得したい国への国内移行は、条約で決められ た期間内(通常は優先日から30ヶ月以内)に行われなければなりません。


PCT国際出願に要する費用 (2019年8月月1日現在)



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外国で特許を取得するのに要する費用