外国商標出願-出願ルートの選択


外国に商標出願をするには 、次の2つの方法があります。

■パリ条約や二国間条約などに基づき、各国別に出願する方法(直接出願

■『マドリッド協定議定書』に基づき、複数国に一括して手続を行う方法(マドプロによる国際出願

どの国に出願するか、出願する国数は、費用は、管理の容易かなどを考慮し、適正に出願方法を選択する必要があります。


直接出願ルート


日本での商標出願と同様に、各国の国内法令に従って商標出願しようとする国に直接出願することができます。このため、 各国の様式に従い、各国の言語で書類を作成する必要があります。

なお、その国に出願人の営業所等がない場合は、現地代理人を選定し、手続きの代理をしてもらう必要があります。

パリルート出願


既に日本に商標出願をしている場合は、出願する国がパリ条約加盟国等であればパリ優先権を主張して出願することができます。この場合、日本の出願の日から6月以内であれば、商標登録の審査は日本での出願日を基準日として判断されるメリットがあります。

EUTM出願


ヨーロッパの各国に商標出願する場合、各国個別に出願することもできますが、「欧州連合商標(EUTM)」として、EU構成国28ヶ国全体を1つの登録として、「欧州連合知的財産庁(EUIPO)」に出願することができます。

1つの出願でEU構成国の28国に出願したことになるため大変便利ですが、以下のような問題もありますので、注意が必要です。


商標の識別力などの絶対的要件は審査されますが、先行商標との抵触などの相対的要件は審査されません。そのため、第三者からの異議申立てを待って先後願との抵触を審査する制度 (異議待ち審査制度)を採っています。

異議申し立て制度の流れは次のようになります。

 1.EUIPOが 絶対的要件を満たしている場合、まずその商標を広告

 2.第三者が 公告日から3月以内に異議申し立て

 3.EUIPOが異議申し立ての様式を審査して 出願人に審理期限通知 し、審査を中止

 4.出願人と異議申立人とでクーリングオフ2ヶ月(延長申請により最大24ヶ月)の期間内に調整交渉。

 5.和解に至り異議申し立てが取り下げられれば、審査が終了。


商標が登録された後でも、相対的要件の審査が行われません。そのため、後からその商標と混同を生じるような商標が出願されても登録される可能性があります。したがって、つねに出願をウォッチして異議の申し立てができるようにしておくことが重要です。


このような問題を避けるために、重要な国でその国が実体審査国であれば、別途、個別に出願をすることも考えられます。
この場合、EUTMは欧州各国の商標と併存して存在することになります。


また、次のようなシニオリティ(Seniority)制度もあります。

EU加盟国で商標登録をしている場合、同一又はこれに 含まれる商品・役務について、同一の商標をEUTMに出願 した場合に自己の先の登録商標を有していたこと(優先 順位=シニオリティ)を主張することができる。
先の登録商標の権利が消滅(取消又は無効となった場合を除く )しても、当該加盟国で有していたのと同一の権利を継続して保有することができます。



EU構成国は次の28ヵ国です。

オーストリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、デンマーク、フィンランド、フラ ンス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイ ン、スウェーデン、イギリス、チェコ、エストニア、キプロス、ラトヴィア、リトア ニ ア、ハンガリー、マルタ、ポーランド、スロベニア、スロバキア、ルーマニ ア、ブルガリア、クロアチア

詳しくは、The 28 member countries of the EU(外部リンク)をご覧ください。




マドプロによる国際出願 (マドリッド制度) ルート


外国に商標出願を一元的に行う制度として、マドリッド協定議定書(以下、「マドプロ」という。)による国際出願制度(マドリッド制度)があります。マドプロ出願は締約国の中から 権利を取得したい国(指定国)を指定することにより、複数国に同時に出願するのと同等の効果 を得ることができるという制度です 。


マドプロ出願では、従来の各国別 の出願制度に比べ、簡単な手続でスピーディーに世界各国で商標の保護を求めることができ、 また経費の節約や手続の一括化など、多くのメリットがあります。


直接出願とマドプロ出願(マドリッド制度)の手続比較


下図は直接出願マドプロ出願を比較したものです。


マドプロ出願の流れは

(1)日本の特許庁に商標出願をした出願人又は商標登録がされている名義人は、その出願又は登録を基礎(基礎商標)に、保護を求める締約国(指定国)を指定し、定められた1つの様式の英語で書かれた願書(MM2)で、日本の特許庁を通じて、世界知的所有権機関(WIPO)国際事務局 に、国際出願を行います。

(2)国際事務局は、国際出願の願書の記載が適正か否か等の方式審査を行い、適正であれば、国際登録簿に登録し、保護を求める指定国へ領域指定されている旨の通報(指定通報)を発します。

(3)指定通報を受けた指定国 の官庁(指定国官庁)は、その出願が自国の法令等に照らして保護できるかを審査し、その出願を拒絶する場合はその旨の通知を一定期間(1年又は各国の宣言 により18ヶ月)内に国際事務局に行う必要があります。拒絶通知が行われない場合、国際登録日から、当該官庁による登録を受けていたならば与えられたであろう保護と同一の保 護が与えられることになります。

マドプロ出願の条件


マドプロ出願を行う場合には、次の条件を満たしていることが必要となります。

日本の特許庁に既に商標出願または 商標登録がされていること

商標(マーク)が同一であること

指定する商品及び役務(サービス)が同一又はその指定範囲内であること

出願人又は名義人が同一であること


マドプロ出願のメリット


マドプロ出願のメリットとしては、次のものがあります。

一の手続きで各締約国への出願が可能

手続きの一本化による経費節減

各国ごとの言語によらず一の言語で手続可能

国際登録簿により複数の国における権利を一元管理可能

事後指定による登録後の権利の拡張


事後指定


事後指定とは、国際登録出願が国際登録された後に、指定国指定商品・役務(サービス)を追加する制度です。ただし、指定商品・役務(サービス)国際登録簿上の商品や役務の範囲内でする必要があります。


各指定国では、事後指定の日にその国に直接出願した場合と同等の効果が発生し、国際出願時と同様に、国際事務局が指定国に事後指定を通報した日から1年(又は18月)以内にその指定国が拒絶の通報を行わない場合は、その指定国の国内登録と同一の保護を受けることができます。


セントラルアタック


セントラルアタックとは、国際登録が、国際登録日から5年間は、国際登録の基礎となった出願・登録(基礎商標)に従属(影響を受ける)することをいいま す。その基礎商標が、 国際登録日から5年の期間が満了する前に拒絶、放棄、無効等となった場合など基礎出願・登録の効果が終了すると、その範囲内で 国際登録された指定商品や役務の全部又は一部について国際登録が取り消されます。その 結果として指定国における国際登録の効果も取消しに係る範囲内で失効します。


指定国から拒絶通知があった場合


指定国から拒絶通知があった場合、現地に営業所があればその営業所での対応も可能ですが、一般的には現地代理人による対応が必要となり、コストが掛かることになります。

従って、国際出願をする際には、出願すべき国の商標制度を理解して、十分検討した上で出願する必要があります。

マドリッド議定書締約国

マドリッド協定議定書の締約国は、特許庁の「マドリッド協定議定書締約国一覧 (外部リンク)」をご覧ください。

また、締約国の詳しい情報については、国際事務局(WIPO)の「Madrid Member Profiles」(外部リンク)をご覧ください。

なお、 「欧州連合知的財産庁(EUIPO)」 も指定国として指定することができます。


出願ルートの選択

以上は、出願ルートの基本的な概要で、外国出願する際の基礎的な部分です。各国商標制度による微妙な違いがあり、特に商品と役務(サービス)の指定は、国際分類を使用している国であっても、その国の歴史や文化の影響を受けて微妙に異なっている場合があります。

一般的に、出願費用、管理コスト等を考慮すると、3ヵ国以上に商標出願をする場合は、マドプロ出願を選択するのが望ましいと思います。

実際に出願する場合は、 専門家に 具体的なケースを提示しながら相談し、出願ルートやどの程度のレベルの出願をすべきかなどを決めるのが最も効率がよいと思います。


外国で商標を取得するのに要する費用 (2019年8月月1日現在)



外国で商標を取得するのに要する費用についてはこちらをご覧ください

外国で商標を取得するのに要する費用




参考資料

欧州連合商標(EUTM)の 詳細にについてはEUIPOのTrade Marks(外部リンク)を参照。

マドリッド制度の詳細については特許庁の「国際出願(外部リンク)」、WIPO「Madrid – The International Trademark System (外部リンク)」を参照。